金属アレルギーを防ぐために

サージカルステンレスとは

金属アレルギー

金属アレルギーは金属成分が水分や汗などの体液と接触して溶出した金属イオンが人体のたんぱく質と結合してアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因)となるたんぱく質に変質します。

この変異たんぱく質が体内に吸収されると体の防御システムが過剰攻撃を加え、その結果自分自身の細胞まで壊してしまうことで痒みをはじめ様々な症状が引き起こされます。

金属アレルギーにならないために

最も簡単なことは体に金属を着けないことです。

しかし・・・

ジュエリー、アクセサリーを身に着けるなら金属を排除することは非常に困難です。

そこで金属アレルギーを起こさない、起こしにくい金属を選ぶことが大切です。

アレルギーを起こしやすい金属

ニッケル、コバルト、錫、パラジウム、クロム、亜鉛、鉄、銅

特にニッケルは金属アレルギーを起こす原因の代表格です。
ところが表面コーティング(メッキ)をする工程で下地にニッケルが使われています。

Napistのメッキ加工(湿式と乾式)

金属アレルギーを起こしにくい金属

① 耐食性の高い(イオン化傾向の低い)金属

イオン化:金属成分が溶け出しにくい

代表例:金、プラチナ、銀

② 酸素と結合し瞬時に緻密な酸化被膜(不働態被膜)を形成し金属を覆ってしまう金属

チタン、ステンレスなど

上記どちらのタイプ金属も金属成分が溶け出しにくいので金属アレルギーを起こしにくい金属だということができます。

サージカルステンレスとは

最近ジュエリーアクセサリーの業界でサージカルステンレスという言葉をよく耳にします。
このサージカルステンレスというのは、ステンレスの種類でも、工業規格でもありません。
ステンレスがアレルギーを起こしにくいということを表現するために

ジュエリー業界で生まれた造語です。

医療用器具にも使用されているステンレスだということを表現するために「サージカルステンレス」という言葉が生まれました。

ステンレスは鉄を主成分として約10.5%以上のクロムを含んだ合金です


ステンレスは酸素に触れると瞬時に不働態被膜(酸化膜)が形成され表面を覆い周辺環境と反応しにくくなるので耐食性が強化されます。(溶けてイオン化することが無くなります。)

ステンレス鋼は3桁の数字で種類が区別され300番台の「オーステナイト系」といわれるステンレスがアクセサリーの原料として使われサージカルステンレスと呼ばれています。
その代表的なステンレスが304ステンレスで鉄に18%のクロムと8%のニッケルが含まれていることから18-8ステンレスとも呼ばれ、高級ステンレスとして食器や医療用の器具など幅広く使われています。

304ステンレスは食器や流し台でも使われていることから、ほぼ錆びることや金属アレルギーを起こすことは少ないのですが

海水や汗など塩分を含む水分に長時間さらされると酸化被膜が破損し金属成分が溶け出します。

塩分に対する耐食性を上げるためにニッケルを12%に増量し更に2~3%のモリブデンを加えることで不働態被膜(酸化膜)が緻密になり耐食性が向上します。


この割合で作られたステンレスが316ステンレスで、船舶の部品や海水ポンプなどに使用されています。
更に316ステンレスから炭素(C)を低くしたのが316LステンレスでLはLow炭素を表します。
炭素量を低くすることで不働態被膜(酸化膜)がさらに安定します。

316Lサージカルステンレス

今までの説明でお分かりの通りステンレスには、金属アレルギーを起こしやすい鉄にクロムそして金属アレルギーの代表格ニッケルで形成されているにも関わらず、金属アレルギーを起こさない理由は、瞬時に形成される不働態被膜(酸化膜)によって直接金属との接触が無くなるからです。
サージカルステンレスと言えるステンレスの中で最もアレルギーを起こしにくいのが316Lステンレスです。

インターネットでステンレスアクセサリーを検索するとほぼ全ての商品の材質が316Lサージカルステンレス(SUS316L)と表示されています。
しかし、これが大きな問題でしてNapistではインターネット上で人気のある原材料が316Lと表記されている商品に加えチタンと表記されている商品を購入しX線装置による成分分析を行ってみました。
その結果316Lと表記されたアクセサリーの大多数が304ステンレスであることが判明したのです。
これは、


① 販売者が悪意を持って偽装表示している
② 製造元であるメーカーが304ステンレスを316Lだと偽っている
③ メーカーがステンレスだと言っているので勝手に316Lだと解釈している

のどれかが原因です。
というわけで、世の中で販売されているサージカルステンレスの多くは304ステンレスだということが推察されます。

また、もっと酷いことに304ステンレスをチタンだと偽って販売している商品の多いことにも驚きました。
チタンと表記しているにも関わらず値段が異常に安い商品を選んで測定した結果その全てが304ステンレスでした。
この理由はだいたい推察できます。
中国語ではステンレスのことを不锈钢、钛钢と表記します。これを翻訳ソフトで翻訳すると
不锈钢はステンレスなのですが、钛钢はチタン鋼となってしまうのです。
悪意の有無は分かりませんが、チタンと表記して安い値段で販売すると、よく売れるのが現実でAmazonでベストセラー入りしている商品があります。
しかし、ステンレスとチタンでは素材自体の色合いが少し違いますのでメッキを剥がして素材を見るとすぐわかりますし、チタンは比重が軽いので持った感じでも判断ができると思います。

それと比較して304,316,316Lは目で見てもその違いを区別することができません。
専門的な測定機器を使用して分析しないと区別することができませんので、ステンレスアクセサリー=サージカルステンレス=316Lということになっているのが現状のようです。
かといって304ステンレスが悪だということではありません。

実際ステンレスのスプーンやフォークを使ってアレルギーを起こす人は極まれでしょうし、ステンレスの食器で塩水をかき混ぜても錆びることなどありません。
長時間、濃度が濃い状態が続くことで錆びたりアレルギーを起こす可能性があるという理解で良いと思います。

304ステンレスはそのコストが低く加工がし易いので複雑な造形が可能です。
ですので、それぞれの商品の特徴を元に使用する材質を決めればよいのです。

より多くのお客様に安心・信頼してお買い物を楽しんでいただくために!
Napistの結論はシンプルに!

304ステンレスはそのコストを低く抑えることができて、加工がしやすいので複雑な造形が可能です。
Napistはそれぞれの商品の特徴を元に使用する材質を決めてまいります。

ネックレスチェーンなど常時身体に接触し汗などの塩分にさらされる商品にはできるだけ316Lを使用し複雑な造形の商品や低価格の商品には304ステンレスを使うというように使い分けを行います。

そして何より大切なことは、商品ごとに材質管理をして商品づくりを行います。
また、お客様もどの素材が使われているのか商品ページに316L、316、304などわかりやすく表記してゆきます。